叱るよりはほめて動かす

いい言葉がいい人生をつくる 斎藤茂太

「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」という言葉も好きだ。
人が思うように動いてくれず、イライラするときなど、私はこの言葉を思い出し、叱るよりはほめて動かそうと心がけてきた。
それが、多くのスタッフが私を支えてくれた1つの理由なのかもしれないと思っている。

女子マラソンの高橋尚子選手を育てた小出義雄監督も、ほめ上手で知られている。
「いいよお、Qちゃん。今日は調子がいいねえ!」とほめまくる。
調子が悪いときにはもっとほめる。
「今日は絶好調だ。タイムはちょっと伸びないけど、走りは完璧だ。こういう走りの後はグーンと伸びるんだ。今は力をためる時期なんだ。いいよお!!」

金メダルを取った後も、小出監督はことあるごとにこう言っている。
「高橋はもっと伸びる選手ですよ。必ず、ここ1~2年の間に大記録をモノにしますよ。だって、高橋はすごい選手だもの。なにしろ、あの子はかけっこが3度の飯よりも好きなんだ。走るために生まれてきたような子なんだよ!!」

第3者を介してほめ言葉を伝えると、直接ほめる以上に、本人に勇気と力を与えるものだ。
だから、マスコミを巻き込んでほめているのである。