台風が過ぎ去るまで家でじっと待つ

辛い気持ちが消えていく 斎藤茂太

生きているうちは、嫌なできごとや悲しい思い・・例えば愛する人の死、あるいは別れ、孤独、後悔、コンプレックス、病気、貧乏、無力感、不可抗力の悲運など、いくつものことに遭遇すれば、前向きな心も少しずつ削られて、ふと気がついたらとても「つらく」なっている。
さて、そのときにどう対処するかが問題だ。
ポジティブ信者ほど、「いつも元気いっぱいでいなくてはならぬ」と、自分を奮い立たせようとする。
そうやって、一人になったときには、ますます気持ちがつらくなっていく。
これが「うつ」への第一歩だ。
この「うつへの道」に迷い込まないようにするには、つらい気持ちは、ありのままに受け入れることだ。

素直に落ち込み、つらくなったら、つらい顔をしていればよい。
それは何もしないことのように思うかもしれないが、そうではない。
回復するまで「じっと待つ」のである。
台風のときには、家の中で過ぎ去るのをじっと待つのが正しい。

自分の生き方を「ポジティブ人間」だとか、「前向き人間」だとか、決まり切った型にはめ込こもうとしてはいけない。
それが、自分を息苦しくさせ、余計なストレスをため、生きづらさを感じさせている要因なのだ。