受容できるとき

今日が人生最後の日だと思って生きなさい 小澤竹俊

ホスピスで出会った男性の患者さんは、入院当初「自分がここにいるからといって、死を受容していると思うな!」と声を荒げていました。
ホスピスは、これ以上治療が望めない方が、できる限り快適に過ごせるようにするための場所ですが、この患者さんには生きたいという気持ちが強く残り続けていたのです。
行き場のない苦しみを抱えた患者さんは、スタッフに辛く当たりました。
ガーゼ交換の手順を少し間違えただけでも罵倒したり、何をしてもお礼の言葉1つ言いませんでした。

やがて、自力ではトイレに行けなくなったとき、その患者さんは今までとは全く異なる口調で言いました。
「私の身の回りのことは、このホスピスのみなさんにすべてお願いしたい・・」と。
入院してから75日目のことでした。

人は本来、人と支え合い、時には迷惑をかけあって生きていくものです。
また、たとえ肉体はこの世から消えても、大切なものを大切に思う気持ち、大事な人たちとのつながりは残り続けます。
何でも自分の力で、きちんとやらなければ、そういった思いに苦しんでいる人は「今日が人生最後の日だったら」と想像してみてください。