千年先の未来を祈る

人のご縁ででっかく生きろ 中村文昭

物心つく頃から他の人には見えないものが見え、聞こえないものが聞こえるという苗さんは、久高島で生まれました。
苗さんが、鶴亀の祈りをささげる場に案内してくれました。
僕が何を祈ろうかと思っているのを見透かしたように、苗さんは言いました。
「ここはね、千年先の未来をお祈りする場所よ。中村さんが千年先の未来に祈りたいことをお祈りしてください」
初詣やお参りで普段祈ることは、自分のことが多いはずです。
別に自己中心的でなくてもそうでしょう。
しかし千年先となると、スケールがプワッと大きくなります。

久高の聖地から出た祈りが、地球を一周してまた原点に戻ってくるというのですから、これは自分たちの繫栄を願うだけでなく、広く地球レベルの願いに通じています。
僕も千年先に向かって、でっかい祈りを捧げました。
命が繋がり、また戻ってくるという観念から、久高島では「さようなら」という言葉はありません。
お別れの挨拶は「いってらっしゃい」だそうです。
巡り巡ってまた元の所に戻ってくるという考えから、1人の人生は短いけれど、子孫はずっと繋がっているということにも通じます。

祈り1つとっても、「今日はいいことがありますように」ではなく、「千年先まで繁栄が続きますように」という遠大な未来に向けた希望があります。