医者も自然死を知らない

やはり死ぬのはがんでよかった 医師 中村仁一

死に際の飢餓状態には、楽に死ねる仕組みが備わっています。
これを邪魔しなければ、人間は穏やかに死ねるのです。
ところが現代医療は、この看取りの原則を破り、点滴を注射したり、人工呼吸器をつけたりして穏やかな死をじゃましています。

今や医者ですら、自然死がどういうものかを知りません。
だから在宅死であっても、死に際に点滴をしたりするわけです。
何もしなければ、医者も患者さんを餓死させるんじゃないかと不安に思うし、家族にしても何かしらして欲しいと願うからです。

私が胃ろうに否定的な考えを持つのには理由があります。
それは、本来医療には目的があるはずだからです。
回復の見込みがある、生活の中身が改善する、などがあれば胃ろうも必要だと思います。
しかし、いのちの火が消えそうになっている状態での胃ろうは、症状を回復させることも、生活の質を改善することも期待できません。