化学療法や手術は受けないと心に決めた

70歳からの選択 和田秀樹

いくつになってもやりたいことがあり、その意欲も枯れていない人にとって、ピンピンコロリはあまりにも唐突過ぎるのではないでしょうか。
そう考えると、ある程度準備ができる死に方の方が理想的だということになります。
その点、末期ガンは「あと1年」「あと半年」など、ある程度余命が分かるという意味で、死ぬ準備ができる病気だといえるでしょう。

延命を望むあまり、化学療法を受けることはかえって生活の質を落とし、やりたかったことができなくなるおそれがあります。
「患者よ、がんと闘うな」の著者である近藤誠医師のように、化学療法には延命効果がないという説を唱える医者も少なくありません。
いくつかの研究によれば、延命は平均で数か月のことが多いのに、治療を受けて以来、ずっと気分の悪い状態が続くことは珍しくありません。

私自身、がんの疑いが出て、化学療法も手術も行わないようにしようと心に決めたことがありました。
2019年の正月のことですが、急に血糖値が660にもなり、体重が月に5キログラムも減ってしまったのです。
医者からは、すい臓がんの可能性が高いといわれました。
その時私はこう考えました。
もし、すい臓がんだった場合、余命は恐らく長くても2年~3年くらいだろう。
であれば、大幅に体力を落とす化学療法や手術を受けず、やりたいことをやって死のうと。
そうした治療を受けなければ、1年半から2年はなんとか元気でいられるだろう。
その後、最期までの半年は動けなくなるだろうという読みだったのです。