勉強するなという普通

人のご縁ででっかく生きろ 中村文昭

お父さんが独立開業したのに、生活が楽にならないのには訳がありました。
世のため、人のため、本当に喜んでもらえる仕事をしたいと言っては、お父さんはほとんど無報酬で仕事をしていたのです。
経費などは持ち出しですから、ますます苦しい生活を圧迫します。
宮田家のルールは、子どもは家事をやること。
学校の宿題なんかやっていようものなら「勉強は学校でやれ。家は勉強するところではない。勉強するヒマがあるんだったら働け」と言って、父親は叱るのです。

人は「やれ!」と強制されるとやる気が失せますが、「やるな!」と禁止されればやりたくなるものです。
だから宮田さんは、よけいに勉強することに執着したのです。
しかし、家庭内での学習は一切ご法度とされ、さらに、兄弟同士の監視の目も光っていましたから、どんなに隠れてうまくやっているつもりでも、それはすぐに父親にばれて叱られました。
その頃から宮田さんは、頻繁に友達の家に行くようになりました。

「三角形の内角の和は、本当に180度になるのかな?」
「虫眼鏡で光を集めると本当に火が出るのかな?」

そういった湧き出る好奇心を満たすためには、早起きして学校の図書館で本を読んだり、友だちの家で勉強するしかなかったのです。