前頭葉の委縮

70歳からの選択 和田秀樹

歳を取るにつれ、スマートフォンや新しい電子機器の操作についていけなくなった、マニュアルを見るのも面倒くさい、という人は多いと思います。
会社勤めの時代でも、50代くらいになると、若い人の考え方がわからなくなった、新しいアイデアを思いつかなくなった、という経験をした人も少なくないでしょう。
高齢になるにつれ、新しいことに興味がなくなり、理解できなくなるのには理由があります。
それは、前頭葉が委縮するからです。
前頭葉とは、脳の表面積の4割を占める部分で、思考や意欲、感情や理性など、人間らしいふるまいを司る部位です。

前頭葉が活発に機能していると、アクティブでクリエイティブであり、気持ちが若々しいのです。
ところが、この前頭葉は脳の中でも一番早く萎縮が始まり、神経細胞の減少が起こることが知られています。

前頭葉が衰えると、日常生活がどんどんルーティン化していきます。
行きつけの店しか行かない、本は読んでいても同じ著者のものばかり、テレビ番組もいつも見ている、おなじみのタレントが出てくるものだけで、知らないタレントや俳優が出てくる新番組やドラマは見ようという気がわかなくなってきます。
新しいことに食指が動かなくなり、面倒くさいと思うことが増えてきます。
様々なことに対して意欲が減退していき、やがてそれを「まあ、いいか」と思うようになってしまうのです。