僕の生まれた日 3

それはドラえもんではなかったし、そもそもアニメでもなかった。
まず実家の近所の公園のベンチが映し出された。
そこでだるそうにタバコを吸っているのは、テルだ。
「なにこれ?」
という俺のつぶやきには誰も答えてくれないので、仕方なくスクリーンに視線を戻す。
画面の中のテルが、芝居がかった口調でしゃべりだした。
「ああ!! むかつくわ、あのオカン」
すると青い全身タイツを着た、顔を青と白でペイントした谷口が登場して一言、
「ユウト君、またそんなこと言って~」
部屋で失笑が起こる。
まさか、こいつドラえもんのつもりか?
画面の中のテルは気にせず続ける。
「いや、あのオカンは絶対俺のオカンやない! あんな家、出て行ってやる!」
・・・そうか、しかもこの画面のテルは今、俺(ユウト)という設定なんだ。
どうりで服装も俺っぽい。
「よし、じゃあタイムマシンで見に行こう!」
と谷口・・・いや、ドラえもんが言う。
「ええぞ、行ってやる!」
と画面の中の俺は勢いよく言って、ドラえもんと二人で歩き出した。
30年前というテロップが出て、舞台はどこかの病室へ。
なんだタイムマシーンは出てこないのか。