僕の生まれた日 2

思えばあの頃の俺は、まだ母とも仲良くやっていた。
甥っ子を映画に連れて行ってやるくらい、気の利いた叔父だったのだ。
それから俺がなかなか定職につかないことに、くどくどと嫌みを言ってくる母と大喧嘩をして、京都の実家を飛び出したのが3年前。
「出て行ったるわ、こんな家!」最後にそんな言葉を吐き捨て、あれから母どころか親戚の誰とも連絡を取っていない。
それから俺は、岐阜県の知り合いが経営するバーで住み込みで働くことになり、一流のバーテンダーになって自分の店を持つ、そんな夢を持ちながらひっそりと暮らしていた。

だが30歳の誕生日の時、地元の友達がはるばる岐阜まで押しかけて来た。
親友のテル、デブの谷口、遠距離恋愛中の彼女も一緒。
店の上に借りていた俺のワンルームはあっという間に人で溢れた。
「ユウト! ちょっとみんなのジュース買って来てや!」と彼女が俺に言う。
「いや、誕生日のヤツに言うかフツー!」
そう言いながらも、みんながはるばる会いに来てくれたことに気をよくしていた俺は、快く使い走りを引き受けた。
そしてコンビニで買い物をすませ、ペットボトルのコーラを抱えて部屋に戻ってきたとき、俺はギョッとした。
部屋の真ん中にプロジェクター、壁一面に真っ白いスクリーン。
「今日はみんなで映画を見ようと思ってな!」と親友のテル。
「はっ、意味わからんし」俺はよくわからないまま畳の上に座らせられた。
間もなくして部屋の電気が消され、映画が始まった。
真っ黒の画面に映し出されたタイトルは「ぼくの生まれた日」
まだ状況が掴めていない俺の戸惑いをよそに物語がはじまる。