健康診断のデータに惑わされる

70歳からの選択 和田秀樹

さらに60代には、体に別の変化も現れます。
耳が聞こえにくくなることです。
加齢性難聴は、一般に50代くらいから高い音が聞こえにくくなることから始まり、65歳を越えると急に増加するといわれます。
耳が遠くなると、認知機能の低下を招きやすくなります。
その理由の1つは、人とのコミュニケーション不足に陥ることがあげられます。

耳が聞こえにくくなったときは、耳鼻科で診察を受けて難聴の進行を食い止めるとともに、迷わず補聴器を使うことです。

70代は、老いと闘える最後の時期ともいえる時期で、一般的には70代までは、まあまあ元気な人が多いのです。
多少は体のキレが悪くはなりますが、歩くにしても普通に歩けるし、運転もできる。
仕事もそこそこできるというのが70代だと思います。
ですから、70代は体の衰えをなるべく遅らせる努力をするべきです。
そのためにも、できるだけ動いた方がいい。
その時に邪魔になるのは、皮肉な話ですが、健康診断の検査データだったりするのです。

一般に、医者であれ患者であれ、検査データが正常であれば元気だという錯覚を持っています。
そこで検査値を正常にしようと、血圧や血糖値を下げるために生活にいろいろな制限をかけようとするのですが、かえってその方が元気な生活にとって害になるのです。