余命宣告はあてにならない

70歳からの選択 和田秀樹

自分が楽になるためなのか、延命するためなのかという治療の目標の選択は、やはり自己決定の必要があると思います。
医者たちは延命第一なので、いろいろな病気に対して薬を出し過ぎる傾向にありますが、私は飲んで楽になる薬しか飲まないことにしています。
いずれにせよ日本人には、死にさえしなければいいというおかしな価値観があって、それが人生の質を低め、ひいては最期の後悔に繋がっているのだと思います。

ところで、医者の余命宣告ほど、あてにならないものはものはないことを知っておいた方がいいでしょう。
たとえば、医者から余命2年と告げられたとします。
この2年というのは、あくまでも平均値であって、誰もが2年で亡くなるわけではありません。
余命2年と言われて半年で亡くなる人もいれば、5年以上生きる人もいるのです。
通常、多くの医者は少し短めに余命宣告します。
というのも、余命2年といっておいて1年で亡くなったとしたら、「あの医者はやぶ医者だ」と批判されることになるかもしれないからです。
逆に、余命2年といっておいて、3年も生きたら「先生のおかげです」となります。
だから医者は通常、余命を短く言うのであり、あてにならないのです。