伝えられなかった言葉 3

そして夏休みも近づいてきたある日、渡り廊下で善夫とばったり出くわした。
「なあ・・」すれ違いに善夫が声をかけてきた。
「哲夫、いい加減、仲直りしようや!」
そのとき、久しぶりに善夫の声を聞いた気がした、にもかかわらず「えっ、仲直りってどういう意味やねん・・」と、はぐらかしてその場を逃げるように去ったのだ。
そうやって声をかけるだけでも、ものすごい勇気を出してくれたはずなのに、哲夫は何も答えてあげなかった。

このままじゃいけない・・・。
夏休みに入ると、哲夫はこの状況を何とかしようと考えた。
二学期になれば、善夫の誕生日が来る。
その時にまた、一緒に駄菓子屋に行こう。
去年みたいに”うまい棒”をおごって、さりげなく今までのことを明るく謝ろう。
そんなことを想像していた。

でも、その日は来なかった・・・。