伝えられなかった言葉 2

「ほんま?」
人に自分の作った曲を聞かせたことがなかったので、初めて評価を聞けて、哲夫は本当にうれしかった。
でも、バンドは自然消滅した。
ドラムが卒業して、残された哲夫や善夫たちも3年生になり、進路のことも考えなければならなかったからだ。
進学クラスの善夫ならなおさらだと思った。

しかしそれも理由の一つだけど、本当の理由は多分、哲夫が善夫を避けるようになっていたことが原因かもしれない。
善夫は少し変わっているところがあって、例えば左右違う靴下をはいていたり、ちょっと変わった言葉使いをする程度のものだったんだけど、仲間の間では笑いのネタになるには十分で、みんなのネタになっているうちに軽音楽部内で善夫としゃべる者も減ってきて、いつしか善夫を無視するという状態に近くなっていた。

でも哲夫は、単純にお互いの居場所が少し変わった程度にしか思っていなかったのだ。