今日できることは

うまいこと老いる生き方

92歳精神科医 どうあがいても、万人死から逃れることはできない。いつかは必ずやって来るものやって、頭の底でいつも自分に言い聞かせている感じやな。そのいつかが、あと何年でやって来るかなんてことは、まさに神のみぞ知るや。無駄な心配はせず、お迎えが来たら潔く逝こうということやな。

54歳精神科医 先生は、若いころからしっかりと死と向き合って生きてこられたから、開き直りが身に着いたんですね。

92歳 そうやな、今とは比べ物にならないくらい、死が身近な存在だったからな。だからこそ、恐れていても始まらん。いつ来てもいいように、毎日できることを精一杯やってきたつもり。

54歳 私は、もちろん戦時中は知りませんが仰ることは分かります。ガン患者のホスピスで、終末医療に携わっていたことがありますから。ガンでお亡くなりになるのは高齢者だけではなく、現役世代の人も少なくなかったです。ホスピスで働いているうちに、いつ自分も不治の病に侵されたり、事故に遭ったりするか分からないという自覚が芽生えました。おかげで、今日できること、したいことは無理のない範囲でいいからやっておこう、伝えるべきは伝えておこうと思えるようになりました。