人生最後の日々を穏やかに

今日が人生最後の日だと思って生きなさい 小澤竹俊

ある患者さんは、60歳の時に末期のすい臓がんが見つかり、医者から「抗がん剤による治療を受けますか。それとも治療をせずに過ごしますか?」と尋ねられました。
ご家族は少しでも可能性があるならば、治療を続けてほしいと言いましたが、ご本人は「治る見込みの薄い治療で身体を痛めつけ、苦しむよりも、安らかにこの世を去りたい」と考えたそうです。

その患者さんは結局、ホスピスで暮らすことになり、亡くなる前に私にこう話してくれました。
「治療を拒否したとき、家族からは反対されましたが、ここでスタッフの皆さんに温かくしてもらえたし、家族とも幸せな時間を過ごせました。ホスピスを選んでよかったと思っています」

もしかしたらご家族には、治療を続けるよう、もっと説得すればよかったという思いが多少なりとも残っているかもしれません。
しかし、患者さん自身が、人生最後の日々を穏やかに過ごせたという事実こそが、いちばん大事なのではないかと思います。