人は人、自分の目指す道を行けばよい

いい言葉がいい人生をつくる 斎藤茂太

私はあまり人を羨ましいと思ったことがない。
そんなことを言うと、何不自由のないご身分なんだと、とんでもない誤解をされることがあるが、もちろんそんなはずはない。
病院の経営で経済的に苦しいときもあったし、もっと頭が良く生まれてくればとは何度も思った。
だが、人は人だ。
どんなに人を羨ましがったところで仕方がない。
それなら、自分の手の中にあるものをもっと愛した方がいい。

ビジネス人には、同じ年に入社した仲間との競争意識がある。
かつては大体横並び昇進していったが、最近は能力主義を徹底する傾向にある。
入社10年もすると、同期でもポストも収入もかなりの差がつく。
同期入社の仲間から遅れたことがショックで出社拒否症になってしまう例さえあるのだ。

より高いポストや収入を目指すのは、ビジネス人として当然かもしれない。
だが、その代償に、たとえば家族と楽しむ時間を引き換えにしている人は少なくない。
何かを手に入れるために、何か貴重なものを失うパターンだ。
あなたが羨んでいる相手も何かを失っている。
だから心を安らげなさいといいたいのではない。
その人と同じものを目指す必要はないと言いたいのだ。

人は人だ。
人生は一回きりしか生きられない。
自分がほんとうにやりたいこと、欲しいものを目指して進んでいく。
それが人生の成功というものだ。
そう気づけば、他人の動向など、あまり気にならなくなると思う。