人になつく癖

人のご縁ででっかく生きろ 中村文昭

1年300日の勢いで講演していますが、全部口コミやし、ほんまのこと言うと、僕は肩書のない人間ですねん。
人が好きで、人に出会って、自分もでっかくなりたい、人のお役に立てる人間になりたい。
ただ、そう思ってるだけの男やと思います。
人は「私の仕事は教員です」:とか、「私はスーパーを経営しています」だの言うやろ。
あれは間違いなんや。
人の仕事は全部同じや。
人間の仕事はすべて、人の役に立つことや。
だから正解は「私の仕事は、教員という役割を通して、人の役に立つことです」となる。
「私の仕事は、スーパー経営を通して人のお役に立つことです」となる。

僕は、子どものころから人になつく癖があります。
この間、実家に帰ったとき、ふと気がつきました。
「あっ、これや。この人が原因や!」
そうです、母です。
たとえば、家族でどこかへピクニックに行こうというとき、母は、もちろん、はりきってお弁当を作ります。
そればかりではなく、朴の木団子というアンの入った団子も必ず作りました。
しかも、その量が半端でないのです。
おにぎり、から揚げ、煮物、卵焼きと、お弁当自体が山のようにあるのですから、団子は当然余ります。
すると母は、当然のようにパッと上着を脱ぐと、風呂敷代わりにして団子を乗せて、全然知らない人の所に配って歩くのです。

「こんにちは。ええ天気やね。お団子どう? 山歩きして疲れたやろうから、甘いもの食べて」というわけです。
そうして配りに行ったまま、しばらく戻ってきません。
一時のおしゃべりが延々と長引き、笑い声が上がり、さんざん盛り上がっているのです。
帰ってくるときは、持っていった以上に上着が膨らんでいました。
・・・お返しに、とうわけです。
団子はすべてなくなり、みかんや他のお菓子がざ~くざくです。