予約表 3

デビューして4カ月、その日もお客さんがいなくて、店内を忙しそうに動き回るスタッフたちをぼんやり眺めていました。
お店の電話は、手持無沙汰の私が出るようになりました。
「はいXX美容院です」
「あのう、カットの予約お願いできますか?」
「ありがとうございます。カットですね。三日後の14時半ですね。ご希望のスタイリストはいらっしゃいますか?」
「ええ~と、ワタセさんだったかしら、その方にお願いしたいのですが・・・」
「渡瀬ですか? 私、渡瀬です。あ、ありがとうございます。それでは、お待ちしております!」
予約の最後に言うセリフだけど、いつも以上に力がこもってしまった。

予約名を見て、どんな方だったか思い出してみました。
確かボブショートにした3つ年上の方、デビューして間もないころフリーで入ったそのお客さんに対して、大好きなコーヒー屋さんの話しを熱弁して困らせた記憶が蘇ってきました。
もう来てくれないかと思っていたお客さんが予約を入れてくださって、私は感激しました。