ラブレター

大好きだったおばあちゃんは、次のような手紙を残して、大好きだったおじいちゃんの待つ天国に旅立ちました。

一人になって、もう一度、あなたに恋しました。
まだ、あなたが私に気づかないでいた頃、あなたと一緒の電車に乗り合わせ、あなたが降りた後の席にこっそり座りました。
夕暮れの優しい西日に変わる瞬く時間、あなたの見ていた景色の続きをみながら、いないはずのあなたを、いつもよりも近く恋しく感じました。
知っていましたか?
あなたが私に、桜の木の下で恋を打ち明けてくれるよりもずっと前から、私はあなたを想っていたのです。
あれから何年経ったのでしょうね?
貴方がいなくなった今、あなたのいない二人で過ごした家の中は、あなたの愛おしさで溢れています。
こうしてもう一度、私はあなたに恋したのです。

天国に桜があるのなら、きっとおじいちゃんも、もう一度、おばあちゃんに恋を打ち開けるのだろうと、春を待つ空を見上げています。