ユーモア

いのちの言葉 ホスピス医 柏木哲夫医師

私の入院経験からも、入院すると患者さんは弱者になり、医者が強者になるという傾向があるように思います。
医者は、病状のコントロール方法を知っているだけに過ぎません。
とくに患者さんが私よりずっと人生の先輩の場合、人間の生き様、死に様を教えていただくという点では、患者さんの方が上だともいえます。
患者さんは、たまたま私より少し早く旅立たれるだけなのです。
ところが、どうしても患者さんの方からへりくだってしまい、壁をつくってしまうというケースがあります。
その壁を取り崩す手段がユーモアではないかと思います。

ずっと川柳をやっていた患者さんが、手術前の不安を川柳にして執刀医に送りました。
「お守りを 医者にもつけたい手術前」
幸い、この執刀医もユーモアの分かる人で「私は近畿一円で一番腕のいい外科医だから、心配しなくてもいいですよ」と、ユーモアで返してくれました。
また58歳の直腸ガンの患者さんは、年末年始は寝正月でいいからと家で過ごされました。
そのとき、奥様が川柳をつくりました。
「がん細胞 正月くらいは寝て暮らせ」