マイナスする幸せ

仏教家の話し

生きるとは「苦」を「別の苦」に変えることです。
お腹が空けば、ご飯を食べます。
今度は満腹になって苦しいので、食べるのをやめます。
座り続けたら、お尻が痛くなりました。
それで立ちますが、今度は足が疲れたのでまた座ります。
このように人間は、24時間「苦」を「別の苦」に変えながら生きているのです。
そして「苦」の感覚を自分で決めておいて、「苦」がこれ以下なら「楽しい」、これ以上なら「苦しい」と定めています。
人生が苦しいと思う場合は、その人の「普通の感覚が高すぎる」のです。
毎日、豪華な食事をするのが当たり前と思っている人は不幸で、そう思っている間は苦しむことになります。

このように「幸福」「不幸」は、自分が決める「当たり前」の基準で成り立っています。
「幸福」になるには、「当たり前」の基準を下げた方がいいのです。

人間は、何かをプラスにして安らぎを得ようとしています。
我々は家を買いたい、金持ちになりたい、旅行に行きたい、と足すことばかりを考えています。
旅行に行けば楽しいのですが、それで人生の苦しみが消えるわけではありません。
仏教では、プラスではなくマイナスしていかなくてはいけませんと教えます。
安らぎの境地になるには、苦しみを引くのです。
マイナスすることによる幸福ですから、消えることはないのです。