バイト君の不器用な思いやり 2

ある日、アキラから突然連絡が入った。
今日は何だ? 遅刻か? と疑いながら電話に出たら、おばあちゃんが亡くなったという。
「実家が静岡なんで当分休みます。次、いつ店出られるかわかんないっす」
明らかに電話の向こうで元気をなくしているアキラに、すぐかけてあげられる言葉を見つけられなかった。
「落ち着くまで休んでいいからな・・」と言いそうになって「それ困るわ!」と言った。
「えっ?」
「お前いないと困る。けどしょうがない。店はアキラなしで何とか回するしかねえわ。でも、がんばるよ。心配するな。好きなだけ休んでくれ!」
アキラはしばらく黙っていたが、「はい」とだけ言って電話を切った。

数日後の深夜、携帯メールが届いた。
「いつも俺のことこき使ってくれてありがとう。店忙しすぎるし、金曜とか土曜とか出勤するの超ブルーです。もっと店がちゃんと回るように努力しようよ。俺とかに頼っている場合じゃないでしょ!」
そして後には、こんな文章が続いていた。
「本当は直接伝えようと思ったけれど、俺文句ばっかり言っているけど、ほんとうは店長がいるこの店が大好きです。それだけ。これからも、よろしくお願いします・・・」

リンクをクリックしたら、突然画面が切り替わった。
「HAPPY BIRTHDAY!」
その時になって、自分が誕生日を迎えたということに気がついた。
「覚えていたのか・・・」
不覚にも、俺は笑ってしまった。
あいつは本当にたちが悪い。
返信の文を考える。
「ありがとう・・!」と打って手が止まった。
後の文が続かなかった。
それ以上の言葉は必要なかったから。