ハプニング

ココロの架け橋 中野敏治

卒業式を終え、彼女の周りにはクラスメートが駆け寄りました。
クラス全員で卒業式をしたいという願いが叶ったのです。
久々に会ったというのに、まったく違和感がなくみんな楽しく話をしていました。
この日を待っていたのは、生徒だけではありません。
クラスの保護者もみんなこの日を待っていたのです。
保護者の方々も、彼女の母親の周りに集まりました。
同じ親として彼女の苦しみを分かっていたのでしょう。
式場のみんなは涙顔から、笑顔に変わっていました。

帰り際、グランドで在校生が列をつくり、見送りをしてくれました。
私は在校生の列の最後にいて、卒業生を待っていました。
卒業生は最後に私と握手をしてくれました。
そんな列の中を彼女も通ってきました。
そして、私を見つけ走り寄ってきたのです。
驚いたことに彼女は、「先生・・・」と言いながら抱きついてきました。
クラスの生徒が送ってくれた色紙に、彼女は「先生のクラスで幸せだった」と書いてありました。