ハッピーバースデートゥーユー 4

「ハッピーバースデートゥユー・・・」
かすかな歌声が聞こえた。
その場にいた誰もが黙った。
「ハッピーバースデートゥユー」タクマ君の声だった。
全員が驚いてタクマ君を見ると、タクマ君も驚いて歌をやめてしまったので、妹はあわてて手拍子を再開した。
「ハッピーバースデートゥユー」「ハッピーバースデートゥユー」と歌を再開すると、その様子を見てタクマ君も安心したのか、また可愛らしい声で「ハッピーバースデートゥユー・・」と歌い始めた。

「ハッピーバースデートゥユー」「ハッピーバースデートゥユー」妹は手拍子をしながら、何度もそのフレーズを繰り返した。
目に一杯の涙をためながら、でもいつも通りの笑顔が崩れないように、一生懸命我慢して、何度も何度もフレーズを繰り返した。

ロウソクに照らし出された部屋に、親子の歌声がいつまでも響いていた。

親が頑張るのは、子供に幸せになってほしいから。
でも時には、その思いが子どもを苦しめてしまうことがあるみたい。
子供にとっての幸せは、親が笑っていてくれることだったりするから、お母さんに笑顔になってほしくて出した声。
きっとそれはお母さんにとって、何よりの誕生日プレゼントだったんだね。