ハッピーバースデートゥーユー 1

投稿から

私の妹は大人しい子だ。
30年間浮いた話の1つもなく、妹自身もそういう話しに興味がないようだった。
だから妹が30歳になって初めてできた恋人との「結婚を考えている」なんて打ち明けてきたときには、母も私もまだ相手の顔を見ていないのに大賛成した。

お相手の方は同じ年の生真面目な感じの男性で、おそらく妹と同じような境遇の30年を送ってきたのだろうなという印象を受ける人だった。
お互い人生初の合コンで知り合い、その日は一言も話さずに終わったものの、次の日駅でばったり再会したことがきっかけとなって付き合い始め、わずか一カ月で婚約に至ったのだ。

そして妹が結婚して1年、彼女は男の子を生んだ。
タクマと名付けられたその子は可愛くて、私のことも「おねえちゃん、おねえちゃん」と慕ってくれて、おねえちゃんだなんて、本当に素直で可愛い子だと思った。

ただ妹夫妻は少し気真面目過ぎるところがあって、タクマ君にはアニメやゲームといったものに一切触れさせなかったし、玩具もすべて木製のものだけに限り、プラスティック製のものは一切与えようとしなかった。
かわいそうに思った母が、よく妹がいないときにこっそりアニメを見せてあげたりしたのだけど、素直で頭の良いタクマ君はいつもその後「ママ、今日ね、おばあちゃんとアンパンマン見たんだよー!」と報告してしまうものだから、おかげで母と妹はしょっちゅう電話で親子げんかをしていた。