チャンスはどこにでもある

いい言葉がいい人生をつくる 斎藤茂太

寄ると触る会社の悪口ばかり言っている人がいる。
「まったく最低の職場だよな」「あの課長の顔を見なくて済むなら、どんな仕事でもするわ」
だが、こんなことを言ってくだを巻いていた人が、いざ、リストラを勧告されると突然豹変する。
どんな仕事でもいい、何とか会社にいたい、と言い出したりする。
手元にある有難みに気がつかないのだ。

つまらない仕事だと思うのは、その仕事の面白さを見出す力がないから。
嫌な上司だと思うのは、自分がその上司の良さに気がつかないだけ。

ある女性社員は、4年制大学を出て意気揚々と入社したものの、与えられる仕事は会議資料の入力やコピー取りばかり。
内心不満だったが、ある日、入力するということは、誰よりも早く企画内容に触れられることではないかと気がついた。
それ以降は、ただ機械的に入力するのではなく、企画内容を理解しながら入力するようにした。
すると、次第に何となくではあるが、企画の立て方、企画書のまとめ方のポイントが分かってきた。
ある日、部内で議論を重ねてきた案件に、自分なりの視点から企画を思いつき、企画書をまとめると思い切って上司に提出してみた。
この企画はまだ詰めがあまく、そのまま採用にはならなかったが、彼女のユニークさは大いに評価され、やがて企画会議の末席に座れるようになったという。