ダイエットが続かないのは

「産み出される幸福の量が増大する行動こそ正しく、苦痛の量が増大する行動は間違いである」という哲学があります。(功利主義というそうです)
「正しさ」よりも快楽や苦痛の量、プロセスよりも結果を重んじる、ある意味現金な哲学です。

この哲学をベースにすると、「ダイエットが続かないこと」は一種の快楽だということになります。
甘いものや夜食を我慢せずに食べる快楽、飲んだ後の深夜に食べるラーメン、そういう強い欲望は、強い快楽だから仕方がないとなります。

19世紀、イギリスの哲学者ミルは、快楽には「量」だけではなく、「質」というものがあるのだと言いました。
ミルは2つの快楽が目の前にあるとき、人間は「質」の高い方を選ぶというのです。
食べたいものを我慢せずに食べてしまうのは、本能のままに生きている動物と一緒である。
それに対して、「高いレベルの快楽」を知っているならば、人間はそちらを選ぶといいます。
それは食事を適正量に減らして、ポッコリ出たお腹を引っ込めることで「引き締まった肉体の自分になれた」という達成感でもあるでしょうし、「ダイエットをやると決めた自分との約束を守れた」ことで得られる自信だといいます。

でも本当に、目の前のおいしいものの「誘惑に負ける」より、「苦しくてもなりたい自分になれた達成感」の快楽の方が強いのでしょうか。
ミルはこう言っています。
人はひとたび「高いとされる快楽」を知ると、「低い快楽」に戻ろうとは思わなくなるのですよと。
それは何故でしょう?
自分は「高い快楽」を」知っているという「尊厳」、つまりプライドがあるからだといいます。

ダイエットを続けるためには、一度でも、意地でも続けて、痩せてみたことがあるという「成功体験が必要」になります。
その成功体験が、低級の快楽を我慢させ、ダイエットを続けさせるプライドを与えるのだと、ミルは締めくくっています。