スイッチオン

人のご縁ででっかく生きろ 中村文昭

「僕が話したのはそういうことなんだよ。もういっぺん聞くよ。勇気を持とうよ。質問ある人、はい!」
ブワッと手が挙がったことは言うまでもありません。
講演会が終わり、壇を降りると、生徒たちは僕の前にずらっと並んで質問攻めにしました。
そろそろ帰りの時間だと言っているのに、質問コーナーが終わらないのです。
長い質問コーナーが終わり、校長室に呼ばれてお茶をいただいていると、バタバタと足音がします。
なんと20人ばかりの生徒が集まってきたのです。
1人の女の子が代表でこう言いました。
「校長先生、どうかもう一度、中村先生にうちの中学に講演に来ていただけるよう、頼んでください」
「もっとお話しを聞きたいのかい?」
校長先生がたずねると女の子は答えました。
「それもありますけど、私たち、親と一緒に中村先生の話しを聞きたいんです。先生の偏差値とかじゃない、自分の人間性の花の種は何なのかというお話しを聞けば、親も本当の私らしさって何なのか、考えてくれると思うんです。私、先生の講演をきっかけにして、親とそういう話しがしてみたいんです」
一生懸命にいうその姿に、校長先生もうなずいています。

子どもにしてみれば、親というのは一番長いこと、自分をよく見ている存在です。
それがいつの間にか、学校の成績だけではかられるのが、つらいというのはよく分かります。
今の子は無気力だと言われますが、僕は決してそうは思いません。
スイッチオンのタイミングが見つからないだけなのです。

高校生や若い男の子は、ある種のカッコよさを求めています。
ですから、人生をうまく渡るには、というような話しよりは、
「好きな女の子に子どもができたらどうするか」
「男として責任取って、どうやって生きていけばいいのか」
といった話に耳を傾けてくれます。
その時の態度で、自分のカッコよさが試されると思う殻でしょう。