ジョン万次郎 1

万次郎は江戸時代の末期、土佐の貧しい漁村に産まれた。
父親は9歳の時に亡くなり、生活はますます苦しくなる。
母は、4人の子供を育てるのに精いっぱいだった。
そんな中で、万次郎も漁に出て働くようになっていた。
14歳の時である。五人乗りのカツオ漁船で沖へ出て二日後、突然激しい嵐に襲われた。
船は大波にもてあそばれ、太平洋へと流されていった。
漂流してから七日目、小島を発見、やっとたどり着いてみたが、溶岩に覆われた無人島だった。
五人は飢えをしのいで、ひたすら耐えるしかなかった。
その試練の最中、四か月後にアメリカの捕鯨船に救助されたのである。

この捕鯨船は、マッコウクジラを追って世界中を駆け抜けていた。
一度航海に出ると、3~4年は戻らないという。
万次郎は、船の仕事を積極的に手伝った。
そのおかげで、技術も言葉もグングン吸収していった。
その熱心さが、ヒットフィールド船長の信頼を得ていった。
船員たちからも、親しみを込めて「ジョン・マン」と呼ばれるようになっていた。