ジャストデザート 3

1年間の休暇を終えてビジネスの現場に戻ったとき、ジャストデザートは最悪の状況を迎えていました。
当時、スターバックスなどのチェーン店の競合が進出し、市場の様子が変わり始め、小売販売業が下り坂をたどるようになっていたのです。
さらに、経営者のエリオットが取ってきた経営方針のために、企業としての蓄えが残念ながら微弱でした。

その当時、300人のMBAを対象にした講演会がありました。
講演者が聴衆者にこう尋ねました。
「みなさんはジャストデザートをご存知ですか?」と聞くと、全員が笑顔で大きくうなずきました。
「その有名なジャストデザートが今、経営危機に陥っているのですが、皆さんご存知ですか?」
すると、聴衆の中から1人の若い女性が立ち上がってこんな発言をしました。
「ジャストデザートは素晴らしいお店ですよ。ケーキはすごくおいしいし、カフェの人たちもみんな親切で感じがいいんです。問題を抱えているなんて、ちっとも知りませんでした。なぜ言ってくれないのかしら?。サンフランシスコの人間なら誰だって喜んで手助けしますよ。何をすればいいのですか? どんどんケーキを買いましょうか? それとも寄付をしましょうか? 」

彼女の言葉に、講演者は「エリオットの築いてきたビジネスのあり方を見たような気がしました」と感想を述べました。
創業から20年間、利益を従業員や地域社会に分与し続けた経営は、果たして間違いだったのでしょうか?