キューブラー・ロス「死ぬ瞬間」

ガンになった緩和ケア医が語る 関本剛

アメリカの精神科医であるキューブラー・ロスは、著書「死ぬ瞬間」において、死にゆく患者との対話の中で、死の受容に5段階のプロセスがあると分析した。
それは次のようなものである。
第一段階 「否認」現実の否定
第二段階 「怒り」なぜ自分がという感情
第三段階 「取引」死を回避する条件を考える、神にすがる
第四段階 「抑うつ」運命に対し絶望する
第五段階 「受容」希望との別れ

死を突き付けられた人間は、さまざまなプロセスを経て最期は死を受け入れることになる、それがロスの分析であった。
ただし、40代で実際にステージ4の肺がんになってみると、とても教科書通りのプロセス進行があり得ないことが分かった。
私自身、5段階のどこにあるのかと質問されても、自分がどういう段階にあるのかは明確には答えられない。
部分的には運命を受容しながらも、別の部分ではそれに抵抗する、その心理をうまく一言で説明することはできない。

ステージ4の治らないガンに罹ってしまった私にとって、人生最期のテーマは「この先、自分はどう生きるべきなのか」という、単純だが切実な問題である。