キャリアを手放す勇気 6

お客様を楽しませるということは、自分を捨てることから始まります。
エンターテイメントは、犠牲の上に成り立ちます。
恥ずかしいからとか、スマートでいたい等の羞恥心や煩悩は許されず、心を裸にしないと何も伝えることができないと知りました。

また俗な話ですが、「麻布十番のマンションに住んで、高級なお店でおいしいものを食べる」という、いわゆる「いい生活」を経験した上で、自分はそれでは、さほど「幸せを感じない」と分かったことも事実です。
そうやって初めて、私は「自分の物差し」に従って生きられるようになりました。

家族と友人さえ失わなければ、こんな考えで飛び込んだお笑いの世界でしたが、今思うと何をそんなに怖がっていたのか分かりません。
友達は離れるどころか増えていきました。
挑戦をすると助けてくれる人が増えると知りました。

本当はやりたいことがある、でも決められないという方が少なくありません。
本心ではすでに答えが出ているのです。
決断するというのは往々にして、1つの道に進むことを決意することと同時に、もう一方の道に進むのをあきらめることになります。
決断においてやっかいなのはその点です。

一歩を踏み出して新しい世界に行くワクワク感より、それまで持っていたものを失うリスクが怖くて、手にしているものにしがみつこうとしてしまうのだと思います。
まずは一歩踏み出して、違ったと思えば引き返せばいいだけのことです。
2度と取り戻せないものなんて、命以外にはありません。
仮にもしも何かを失ったとしても、代わりに、人生流されて終わったのではなく、自分のやりたいことに挑戦した納得感というかけがえのない宝物を手に入れられるはずです。