キャリアを手放す勇気 4

死というのは遠くて無関係のところにあるのではありません。
自分が思うよりずっと近くにあるのです。

将来のために勉強して、頑張って、人生に保険をかけて、できるだけリスクの少ない方へ向かおうとします。
でも、将来のためっていったい何だったのでしょう。
決断がときに困難なのは、何かを手にする代わりに、過去に手に入れてきたもの、今手にしているもの、将来手にするかもしれないものを失うリスクがあるからです。
でも人間は、最後にはみんな死んですべて終わってしまいます。
それで死ぬ時まで本当にやりたかったことに挑戦できなかったら、こんなにアホらしいことはありません。
リスクでもなんでもとって、目一杯好きなことをやるという生き方に実際にシフトできたのは、死をとても身近に感じるという得難い経験のおかげでした。

世間一般で良しとされること、例えば「せっかく東大に入学したのだから将来は官僚か大企業に勤めるべし」ということが私の中でも「正解」になっていました。
東大やマッキンゼーという世間でいう「勝ち組」の集団に所属しているうちに、知らず知らずのうちに「勝ち組人生を送るべき」という幻想を抱き、歪んだプライドが形成されていったのだと思います。

お笑い芸人になるということを決めたものの、その後待ち受けていた数々の心理的なハードルを越えるのは至難の業でした。
お笑い芸人になってもいいんだの次は、マッキンゼーを辞めてもいいんだと、自分を説得するのが大変でした。
私は今の仕事を続ける3つの条件に突き当たりました。
この中の1つでも当てはまれば、マッキンゼーを辞めないで続けるべきだと思ったのです。
1 好きかどうか
2 人より得意か
3 その先に目標はあるか です。