キャリアを手放す勇気 2

「頑張ればなんとかなる」で生きてきた私にとって、生まれて初めての「頑張ってもできない」という挫折でした。

不謹慎ですが、「なんで私の乗っているタクシーは事故にあってくれないのだろう」と思うようになりました。
そして、そんな状況に追い込まれてもなお、マジメに愚直に頑張ることで生きてきた私は、定刻に出社だけはするのです。
「逃げ出したい」
かといって自分から逃げるのは許されない。
電車に飛び込むのだって自分から逃げたことになる。
でも車がひいてくれたなら、周りから「あいつ、やっぱり逃げたな」と思われずに、同情を買いながら今の状況から抜け出すことができる。
このように、心身ともに憔悴しきっているにもかかわらず、「体裁にがんじがらめになっている自分」がいました。
歪んだプライドとは本当にやっかいなものです。
今振返るに、あのときの私は一歩、いや半歩間違えれば危ない状態でした。
ちょっとだけの何かの拍子次第では、私はこの世にいなかったかもしれません。

 今、心身を病んでいる人は、速やかにその場から逃げてください。
少し勇気を出して「自分から逃げてください」。
自分の心身が悲鳴を上げていることは、どんなに近しいと思っている人にも伝わっていません。
職場の人はもちろん、家族や友人、恋人を含めてです。

心身を病んでまでする仕事などありません。
自分一人いなくなっても回らなくなる仕事も、この世には一つもありません。
本当につらくなったら逃げてもいいのです。

この頃、会社を休み始めた同期がいました。
私のように追い詰められた結果、体調を壊したのです。
この頃から、歪んだプライドにしがみついていた私の意識は次第に変わっていきました。

 会社が入っているビルの前を歩きながら思いました。
「ちょっと待てよ。生きるために仕事をしているのであって、仕事のために生きているわけじゃない。そもそも私の人生なのに、なんでやりたいこともやらずに死にたくなっているのだろう。バカじゃないの。なにマッキンゼーだからって振り回されてんの。あくまでこの人生の主役は自分。自分が人生のハンドルをガツンと握って、いくらでも好きなようにしたらいいじゃん」

 この瞬間、ようやく歪んだプライドが消え去り、人としてのプライド、そもそも人が何を言おうと自分のやりたいことに突き進める自分のプライドが復活して、世の中の「よいとされているもの」に振り回されている場合じゃない。私は好きなことをするんだ!と思えるようになったのです。