ガン治療を放置した医師の話し 1

日本人の死に時より 医師の書

多くの医者は、病気を治すことしか考えていません。
だから、患者さんの死からはできるだけ目を背けていたいのです。
死に行く患者さんや老人は、ある意味、医師にとって敗北の象徴なんです。

1990年11月、「日本医事日報」という医師向けの雑誌に、「死に面して」と題するエッセイが掲載されました。
62歳の内科医が、自らの胃ガンを自分で診断し、手術不可能と判断して、そのまま死を待つことにしたという内容です。

胃ガンの治療をしない理由について、氏はこう書いています。
もし手術をしたりして、生き残っていたいと思ったら、年に1回くらいは健康診断をしたはずです。
ガンになったらなったで仕方がない、ある年齢になれば消化器系のガンで、ものが食べられなくなり、身体も弱って寝たきりとなり死ぬ、そういう死に方もいいなと思っていました。
それに比べると歳をとってもっと悲惨な老後、もっとつらい死は、経験の浅い私でもたくさんみてきましたし、実際にも非常に多いと感じていました。