ガン死は最高

大往生したけりゃ医療とかかわるな 中村仁一

ガンが老化であることは前述したとおりです。
早期ガンと言われて取り切れた場合でも、その後は一定期間ごとに苦痛を伴う検査を繰り返さなければなりません。
また、無事に5年経った後でも、生きている間はずっと「再発」に怯え続けなければなりません。
この心理的ストレスは相当なものと思われます。
早期だからよかった、安心ということでは必ずしもないようです。
生きている間は、こんなことがずっと続くわけですから、これは不幸といってもいいと思います。

一方、がん検診や人間ドックに近寄らなかった場合はどうでしょう。
症状のないまま、普通の生活をしていたら食が細り、やせてきて顔色も悪いので、周囲が心配して無理に検査を受けさせたら手遅れのガンだった、そんな話をよく聞きます。
なぜそんなに進行するまで病院に行かないのでしょう。
痛まないからというのが、その答えでしょう。
一見、手遅れの発見は不幸の極みのようにうつります。
しかし考えてみてください。
それまで何の屈託もなく、自由に充実した毎日が送られていたわけです。
痛みが出なければ、今後も体力が落ちて自由に動くのが難しくなるまで、普通の生活をすればいいのです。

長生きもけっこうですが、ただ長生きをすればいいというものでもないでしょう。
どういう状態で生きるかが重要だと思うのです。
人生の幕引きを思い通りにできるかもしれない「ガン死」は最高だと思います。