ガン患者としての生き方

ガンになった緩和ケア医が語る 関本剛

ガンになって、私は様々なことに気づかされた。
しかし、以前といはまったく違う自分になったわけではない。
価値観が180度変わったということではないし、精神力が著しく向上したわけでもない。
相変 わらず迷う自分、弱い自分は内在しているし、それは最期まで変わらないだろう。

年齢が若いガン患者さんは、病気が発覚した時点ですでにステージ4だったり、転移があるケースも少なくない。
心の準備もなく、いきなりガン患者となってしまう衝撃はやはり大きいが、年齢が若いから衝撃も大きいというのは必ずしも正確ではない。
実際、90代の方でも「まさかガンだとは思いませんでした」と、がっくり落ち込む人がいる。
2人に1人の日本人が、ガンになっているにもかかわらず、ガンになるという未来を予測し、覚悟して生きている人はそういないのである。

10代、20代といった年齢の患者さんと接する場合には、ライフレビューを行うよりも、今この瞬間に目を向け、その日1日を大切に生きる「マインドフルネス」の実践が効果的な場合もある。
生きる意味や将来どうなるかを考えるよりも、今この瞬間を充実して生きる、そのことに集中した方が患者さんの心を安定させることができるというわけだ。
ごく普通の生活を送れることに感謝しながら、1日、1日を大切に生きる。
これも立派なガン患者としての過ごし方だ。