ガンになって良かったこと

いい言葉がいい人生をつくる 斎藤茂太

私の経験からいっても、悩んだからといって、起こってしまったことが元に戻ったり、失敗が復元したということはない。
くよくよするよりは、寝るのが一番。
翌朝起きたての冴えた頭で、善後策を考えればいい。

サイモントン療法というものがある。
アメリカのサイモントン教授が提唱し始めたもので、その第一プロセスは、なんとガンになって良かったことを数え上げるというものだ。
誰だって、ガンになって良かったことなんかない、と考えてしまいそうだ。
だが、よくよく考えてみると、誰でもその答えは見つかるという。
例えばある医師は、ガンになって実際に自分が手術台に上がってみて、手術台の上で患者がいかに不安にさらされているかがよく分かったという。
あるビジネスマンは、ガンになって初めて、部下が心底、愛おしく思えるようになり、手術を終え復職してからは、それまで以上に部下と心を1つにして開発プロジェクトに取り組んでいる。
改めて夫婦の絆を固く結び直した人もある。