オムライス 4

肉親と呼べる人はいなくなってしまったけど、肉親のように思ってくれる人がまだいるのです。
祖母の葬儀を済ませた私は「もう絶対に泣かない」と決意しました。
そして2日ぶりにお店に戻ってきました。
ドアを開け手探りで電気をつけると、見慣れた光景がありました。
グラスもボトルもきちんと片付いています。
オーナーがきれいにしていってくれたんだとな、と気づきました。
ただカウンターの上にはお皿が出しっぱなしになっていました。
片づけ忘れたのかと思って近づくと・・・それはオムライスでした。
いつだったか、オムライスが私にとって特別な料理であることを、オーナーに話したことを思い出しました。

まだ温かそうなオムライスには、ケチャップで文字が書かれていました。
「がんばれ!」
もう泣かないと決めたのに。
私はあふれる涙を止めることができませんでした。
「オムライスにね、ケチャップで文字を書く時はね、食べてもらう相手のことをすごく思いながら書くのよ」
どこかで母の声が聞こえたような気がしました。

料理は手紙のようなものでした。
そこに込めた気持ちが、味を通して心に届けられる。
本当に贅沢なんものとは、作り手の強い気持ちが込められたものを、しっかり心から味わえること。
それが理解できると、料理とは素晴らしく贅沢なものに思えるのだった。