やさしい人になるには

一番大切な質問です。
「わたしたちは、どうしてもっとやさしい人になれないのでしょうか?」

その答えとして、たとえば
「わたしが全世界の中心である。自分のことがもっとも関心をひくことであり、重要なことはそれだけだ」という考え方があります。
また「わたしは全世界と別に存在している。こちら側にわたしがいて、あちら側に他人がいる」という捉え方もあります。
そして「わたしは永遠不滅だ。だれもが死ぬ?そんなことは分かっているよ。でもそれは、今のわたしにはあてはまらない」という感覚もあります。

もちろん、誰もそんなことは信じていませんし、理性では間違っていると分かっています。
でも残念なことに、本能ではそのように感じている自分がいることも事実です。

どうすれば、自分勝手ではなくもっと愛情のある、現実に目を向けた人になれるのでしょうか?

わたしたちは、人生の中で「とてもやさしかった時期」と「あまりやさしくない時期」があったことを自覚しています。
何があのとき、わたしにやさしさを導いてくれたのか、あまりやさしくない時期からわたしを脱出させてくれたのは何か、ぼんやりとですが理由も知っています。

私たちは幸運なことに、生まれる前からこうした問題を考え、わたしたちに答えを残してくれた多くの賢者に接することができます。
彼らの書いた著書から学ぶことで、哲学や精神的な基本について、自己を確立していくことは大切なことです。

いいことが一つあります。わたしたちは歳を重ねていくうちに、自然に少しずつ「やさしい人」になっていくということです。
歳をとっていくと、自分勝手はなんと無意味なことのかということが分かってくるからです。
長い人生の中で「人に蹴飛ばされたり、つらいめにあっていたとき、誰かがそばに来て助けてくれたり、味方になってくれた」経験を味わいます。
どん底のときに受けた「やさしさ」は言葉で例えられないくらい「うれしい」ということが分かると、今度は自分が「やさしさ」の恩返しをしたいと本気で思えるようになります。

「やさしさ」を意識したとき、自分は世界とは別に存在しているのではなく、世界の中に溶け込んでいると実感できるのです。