ほんとうは

ココロの架け橋 中野敏治

いざ釣りを始めたものの思うようには釣れず、あっという間に空は暗くなってきてしまいました。
いったん釣りをやめて、キャンプ場に戻りました。
彼らは釣りと同じくらい夕飯のバーベキューも楽しみにしていたのです。
食事中に「おまえ、お袋に電話しろよ。病院行ったんだろう」という言葉が気になったのか、片付けている途中で「俺、ちょっと」と言いながら、1人の生徒がその場を離れました。
「あいつ、電話だな」
「そうだろう、やっぱり気になるよな」と、彼らはお互いのことを十分に分かりあっていたのです。
さりげなく帰ってきた彼ですが、みんなは電話をしてきたことは分かっていました。
「どうだった?」と声をかけると、「大丈夫」と彼の返事。
彼らは、それだけで心が通じていたのです。

残り火でうす暗くなった中で、バーベキューの火が消えるまで、いろいろな話しをしました。
生徒たちは、みんな一生懸命生活していること、反抗してしまう行動とは反対に、親への思いが強いことなど、学校生活では感じられないことをたくさん話してくれました。
話の中で「学校だと、先生がしつこいよ」と私に注文をつけてきました。
思春期で反抗期の彼らは、学校でも親にも反抗する状況と同じだったのでしょう。

明日の釣りのために早めに就寝しました。
ここでも、彼らは荷物をテントの隅にきちっと寄せるのです。
学校では、だらしのない様子しか見ていなかった私には驚きでした。