ほんとうに彼女を戻してよかったのだろうか

ココロの架け橋 中野敏治

私が彼女を家に帰した日の夕方、彼女の家を訪ねました。
彼女は母親に「学校に行ってみんなの顔を見られてうれしかった。でも、ちょっと疲れたよ」と話しをしていたそうです。
そして「やっぱり先生に、この格好を注意されたよ」と話していました。
彼女は分かっていたのです、注意されるということが。
もし注意しないで受け入れていたら、彼女は不信感を持ったかもしれません。

しかし、数日間、私は彼女を家に戻したことについて悩んでいました。
本当に家に戻したことがよかったのか。
どこからか、「何しろ登校させることが最優先だろう。登校しているからこそ指導ができるのだろう」という声が聞こえる気がしてならなかったのです。
でも、どうしてもあの時はできなかったのです。
あんなに必死に虚勢を張っている彼女の姿が痛々しかったのです。
もっともっと彼女らしさがほしかったのです。