なぜ60%主義がいいのか

いい言葉がいい人生をつくる 齋藤茂太

60%や80%でこと足れりというような生き方では、大きな目標は達成できないと反論される人もあるかもしれない。

十数年前、ネパールのカトマンズを訪れたときのことだ。
最初はヒマラヤの山々をはるかに望むことができただけで、非常な満足を覚えてものだ。
ヒマラヤの白き峰は、たとえようもないほど神々しく、静かにそこに端座していた。
だが、しばらくそこに滞在していると、もう少し高いところまで登り、ヒマラヤの山々がさらによく見えるところまで行きたくなる。
次にはもう少し高いところまで・・・。
この心の高ぶりがいいのである。

実際、最初から一番高い地点を目指そうものなら高山病にやられ、ひどい場合には生命にもかかわる。

人生も、高山を登るごとしだと、私は思う。
60%の所で満足していれば、やがて、自然にその少し上に登りたくなる。
そうなったときに、少し高度を上げるのは無理でも危険でもない。
人生60%主義は、高度馴化をしながら、しだいに自分をレベルアップしていく高度なテクニックだといえないだろうか。

少しずつ登って行けば、常に自分の現状に満足感を感じながら、徐々に高みに到達できるはずだと思う。