つらい経験は滋養

辛い気持ちが消えていく 斎藤茂太

初めての恋愛、そして初めての失恋。
失恋ばかりではない。
人は様々なつらい気持ちを経験しながら、一歩一歩成長していく。
受験の失敗、友人との仲たがい、親しい人との別れ、人から叱られたこと、仕事での失敗、競争に負けること、人から取り残されること・・・そのようなつらい気持ちが、あなたを1つ1つ大人にしていく。

Hさんという女性は、10代のときに、学校の友達から仲間はずれにされた経験がある。
そのときは、本当につらかったというが、それから数年経った今、「ああいう経験をしたおかげで、人の心の痛みやつらさが分かるようになれた。人を思いやり、やさしくできるようになれた」という。
また、そう考えられることができるようになって、心の中に巣くっていたつらい気持ちは、自然に消えてなくなったということである。
時々、気持ちがつらくなっても、それは自分の成長を促してくれる滋養のようなものと、肯定的に受け止めることもできるようになったという。

つらい経験をするたび、自分が1つ大人になる。
そう考えると、つらい経験をしていることが、ちょっと晴れがましくも思える。
つらい経験を心の栄養と考えられる人が、つらさを乗り越えることもできる。
なぜなら、心が成長したからである。