つらいのは自分だけではない

辛い気持ちが消えていく 斎藤茂太

ある日突然、交通事故で大けがを負ってしまった。
検査のつもりで行った病院で、実は重病に冒されていることを知らされた。
大切な身内が急逝した。
長年勤めていた会社からリストラの宣告をされた。
まったく思いがけないアクシデントに突然見舞われたとき、ショックとともに人はつい、このように考えてしまいがちだ。
「なんで自分だけ、こんな目に遭うのだろう・・・」

確かに自分はとんでもない目に遭ったが、これは自分だけではない。
もっとひどい目に遭って、それでも頑張っている人もいるのだから、自分もがんばらないと、と気持ちを切り替えられる人は立ち直りも早い。
実際、重い病気だと診断されて落ち込んでいる人が、同じ病院で入院している患者と知り合って、元気を取り戻す例は多い。
「こんな小さな子どもが、自分よりつらい病気と闘っているんだ。いい年をした大人がいつまでも落ち込んでいたら、恥ずかしい」

自分以外にも、こんな苦しみを耐えている人はいくらでもいる。
いや自分なんかは、まだましな方だ。
だからこれ位のことで負けてたまるか、と考えてほしい。