すごい人

マザーテレサが運営している、精神障碍者、身寄りのない老人などを収容しているプレムダンでのできごとです。
沐浴が終わって一段落したところに、中年の乞食の重傷者が運び込まれてきました。
顔も頭も衣服も垢まみれ、もう何年も路上に寝ていたのでしょう。
思わず鼻を摘まみたくなるほどに悪臭が漂っています。
しかも右足かかとに骨が剥き出しになるほどの大けがをしていました。
人間不信の極にあったその乞食は、わめいて誰も寄せ付けません。

ところが、ここで何カ月かのボランティアをしているドイツ人看護士が、彼をなだめすかして体を洗い始めました。
ぼさぼさの髪もひげもじゃの頬もきれいに剃り上げ、まるで別人のようになりました。
そして、手当てが始まりました。
バケツに消毒液が満たされ、それに右足を浸して消毒し、破傷風の注射が打たれました。
腐った傷口から、ウジ虫や腐敗したものを取り去るたびに、そのベンガル人は痛さで叫びました。
麻酔なしの手当てだったのです。

手当てが終わると、素晴らしい光景が現れました。
その看護士が、彼を抱きしめたのです。
「長いこと人間扱いされず、辛かったろうに」と、抱きしめた手で長いこと背中をさすっています。
ベンガル人の目から、大粒の涙が溢れています。

マザーテレサは、常々シスターやボランティアの人々に言っています。
私たちは、貧民のお世話をしている社会福祉士でもなければ、無料医療サービス隊でもありません。
行為としては同じですが、私たちの目は、サービスを受けに来る人々に向かっていなければなりません。
その人たちの中に輝いている、神様を礼拝する気持ちがなければならないのです。