ここまでして俺のことを気遣うのか

75歳男性の投稿より

60年前のことですが、自動車の運転免許を取得したいと母に相談して、いくらかの金を準備して50キロ離れた町の自動車学校に行くことになりました。
バスに乗って出発したのですが、300メートルくらい走ったところで、道路の真ん中で手を挙げてバスを止める母がいたのです。
運転手さんに、今乗った男の子にこれを渡してくれるように頼んだのです。
私に届いたものはも、メリケン粉の文字が入った布袋で、中身は麦交じりの米でした。

あの時は恥じらいがあり、母に声をかけず、バスは再び発車してしまいました。
バスに間に合うように、メリケン粉の袋に米を入れてきたのでしょう。
肩に白い粉がかかったままバスを見送る母の姿、あの時の光景が私の人生を変えてくれたと思います。

運転手さんも軍手についた白い粉を払いながらほぼ笑み、「お母さんだろう・・・」と聞いてくれました。
私の洋服も白い粉だらけになりましたが、布袋を抱いているうちに、ここまでして自分のことを気遣うのかと、目頭が熱くなり、うつむいたまま涙をこらえていました。
あの時の母の姿が焼き付き、大きな絆となり、今の私を支える源になっているのです。

母の大きな愛に触れると、「母にすまないことは決してしない」、そんな思いがいつも頭に浮かんできます。