お金は使ってその価値が生きる

みっともないお金の使い方 川北義則 

金遣いの荒い人は「貯めるばかりが能じゃない」と言い、貯め込むのが好きな人は「浪費は慎むべきだ」と言う。
お金を貯めることは大切である。
だが貯めるだけではだめだ。
お金を貯めて、通帳残高を見て「にんまり」するのも楽しいだろうが、その楽しみ方はかなり陰鬱である。
お金とは、本来使うためのものである。
お金というのは使って初めて、その価値が生きる。
適切に使うことなく貯め込むのは、用をなさないばかりか、お金を殺すようなものだ。

日本の対外純資産は350兆円(20年末現在)あり、個人の金融資産は1992兆円(21年6月現在)もある。
家庭に置き換えると分かりやすいだろう。
家族が贅沢するので、父親の給料だけでは足りない。
そこで父親は、稼いでいる息子や娘からお金を借りて家計を賄っている。
その代わりに、きちんと利子をつけて返済している。
今まで子どもたちから借りた額は1216万円になろうとしているが、息子や娘には1992万円の預貯金があり、一家には別に350万円の預貯金もある。
父親が政府で、子どもたちが国民で、その多くは高齢者だ。

子どもたち(高齢者)は、貯め込んでばかりいないで、たまにはウナギでも買ってくるとか、外食するとかして、家族で贅沢に食べればいい。
預貯金は減るかもしれないが、みんな元気が出て、より稼ぎも増えるだろう。

個人金融資産1992兆円の多くは中高年が持っている預貯金なのだ。
確かに収入の亡くなる老後は不安かもしれないが、貯め込んでばかりいないで、もっとお金を使えばいい。
そうすれば、もっと景気もよりよくなるはずだ。
今の高齢者は、平均3000万円以上の預貯金を残したまま死ぬといわれている。
マイホームも加えて1億円までいかないくらいの資産が、相続のときに一番もめるそうだ。