お腹が一杯なので心配せんでええよ

73歳男性の投稿より

昭和19年、敗戦になるとは夢にも思わず、耐乏生活に苦しみながらも頑張っていました。
我が家は10人家族、食べるコメが少なく毎日、毎日おかゆばかりで、育ち盛りの私たちには耐えがたいひもじさでした。
夕食時になると、早く食卓に着かなければ、水の中に米粒が浮いているようなおかゆなので、あっという間に空になりました。

そういう状況の中で、子供に食べさせるのに精いっぱいで、自分は一杯のおかゆにもありつけない母の姿が目に映りました。
「お母さん、なぜ食べんの?」
僕の食べかけの茶碗を差し出すと「今日はお腹が一杯なので心配せんでええよ」と笑っていました。

それは子供に腹いっぱい食べさせるためのパフォーマンスです。
可哀そうにと、子供心にも母の愛が伝わり、私の箸は進みませんでした。
その母も、病気で61歳の生涯を終えました。

もし今、母が生きていてくれたら少しでも恩返しができたのにと、思い出すたびに涙が頬を伝います。